長い毛におおわれ、北極に近い草原で群れて暮らすウシの仲間です。
長い外側の毛の下に、冬の寒さを防ぐ細かな毛が生えます。オスにもメスにも角があり、いったん下がってから先が上へ曲がります。
ジャコウウシの個体数は、雪解けから植物の開花、出産期へ続く季節のつながりに左右されます。東グリーンランドのザッケンベルクでは、1996〜2019年の24年分の記録を使った研究が、夏の積雪が浅い年ほど北極ヤナギの開花期が早まり、ウシの個体数が多くなる経路を統計モデルで示しました。研究者は、5〜6月の出産期初めに餌へアクセスできることが繁殖成功に重要だと説明しています。
一方、春の進み方が出産期を追い越せば、植物と子育ての時期がずれて効果が変わる可能性も指摘しました。観測期間中、北極ヤナギの花の半数が開いた日の中央値は6月23日±7.6日でした。春の変化を考えるとき、気温だけでなく、積雪、植物の季節、出産の時期までたどる視点を与えてくれる研究です。対象はザッケンベルクのジャコウウシ個体群です。
IUCNレッドリスト · 低懸念(Least Concern, LC) · 世界全体(IUCN global assessment)
IUCNの世界評価では、ジャコウウシは2020年に低懸念(LC)と判定され、個体数傾向は減少と記録されました。成熟個体数は127,102頭と推定され、3世代にあたる1998〜2019年に世界の数は約157,100頭から8%減ったと評価されています。地域差も大きく、カナダのバンクス島とビクトリア島では1990年代半ばから2019年にかけて個体数が大きく減る一方、アラスカ、ロシア、西グリーンランドの再導入個体群は増加しました。高緯度の島では、冬の強い着氷や遅い雪解けの後に急減した例があり、温暖化に伴う餌環境や病気・寄生虫の変化も脅威として挙げられています。評価には個体数の継続調査、狩猟管理、保護区、再導入が記録されています。