大きな頭と白いあごを持ち、氷のある北の海にくらすクジラです。
体は暗い色で、背びれがありません。厚い脂肪が冷たい海で体を保温します。
ホッキョククジラは、いくつかの音を組み合わせ、繰り返す「歌」を水中で出します。スピッツベルゲン周辺の個体群では、冬には昼にも夜にも、さまざまな歌が響いています。
二〇一八年の研究は、グリーンランドとスバールバル諸島の間にあるフラム海峡西部の録音を調べました。二〇一〇年から二〇一四年の間に得られた三季分の記録で、少なくとも一八四種類の歌の型が見つかりました。録音機は毎時の最初の一四〜一七分を記録し、研究者は音の高さや長さ、音の並び方などを比べて歌を分けています。
多くの歌の型が現れたのは一二月と一月でした。一つの型が聞こえる期間は、数時間から数日ほどのものが多く、一か月を超えて続くものは少数でした。一方で、冬の間を通じて聞こえる型もありました。今回の記録では、それぞれの歌の型は一つの録音季だけに現れ、別の年の記録には重なっていませんでした。極夜の海には、冬の進行とともに新しい型が現れ、消えていく多彩な音の世界が広がっていました。
絶滅のおそれの評価は、まだ掲載していません。
北東大西洋の海洋環境を評価するOSPARは、二〇二〇年の報告で、スピッツベルゲン個体群の保全上の課題を整理しています。海氷の減少による生息環境の変化に加え、水中騒音、船との衝突、漁具への絡まりを脅威に挙げています。氷が減る海域で船の利用が増えることを踏まえ、船舶の影響について国際海事機関に懸念を伝え、この個体群の状態や脅威を国際捕鯨委員会で優先的に扱うことも提案しています。