のどの袋を使って大きな声を響かせるテナガザルです。森の枝をつかみ替えながら移動します。
厚い黒い毛と細長い腕を持ち、のどには大きな袋があります。
フクロテナガザルの歌には、口を開いて出す音と、口を閉じて喉の袋から響かせる低い音が組み合わされています。低い音のすぐあとに短い声が続くこともあり、二種類の音の切り替えが、歌の細かな拍子をつくります。速い連続音と、間を置いた音の組み合わせで、響き方が変わっていきます。
二〇二六年の原著では、七つの動物園の大人十四頭の録音から、音が始まる時刻を一つずつ調べました。口を開いた音だけ、袋から響く音だけ、両方を合わせた音列を比べています。二〇一一~二〇二五年の複数の時期にイタリアの三園で集めた録音と、ほかの四園の公開動画の音声を合わせた分析です。
どちらの音列にも、隣り合う音の間隔がほぼ等しくなる傾向があり、二種類を合わせた全体にも同じ傾向がありました。とくに口を開いた音が三つ続く部分では、その傾向が強く表れました。著者らは、音の出し方を切り替えるタイミングの結び付きに注目しています。一頭の歌の中にも、複数の音を組み合わせる細かな時間の仕組みがあります。
絶滅のおそれの評価は、まだ掲載していません。
西スマトラの南ソロクでは、保護されたフクロテナガザルを森へ戻すカラウェイトの活動が行われています。二〇二六年の原著は、放された三つがいの位置を追い、分断された森林での移動を調べました。著者らは、放したあとの見守りを長く続け、様子を確かめながら補助の餌を段階的に減らすことや、離れた森林の木々をつなぐ環境の回復を勧めています。