ヒシクイは北シベリアで繁殖し、冬はヨーロッパへ渡るガンです。英国で冬に記録される個体は、亜種rossicusです。
英国で冬に見られる個体は、ほかの灰色のガンより濃い茶色みがあり、脚は橙色で、頭と首も暗めです。
東アジアで冬を過ごすヒシクイには、昼と夜で使う場所を替える暮らしがあります。中国と韓国へ渡る東部の亜種を追った研究では、冬は昼に農地を、夜に湿地を多く使う傾向がありました。同じ亜種でも、北極圏のどこで夏を過ごすかによって、渡りの道筋や冬に使う場所が異なっていました。
2022年の論文では、位置を記録する機器を付けた成鳥26羽のデータを使い、三つの集団を比べました。ロシア北極圏の中央部から中国へ渡る集団では、冬の日中の主な行動範囲の約62%が農地で、夜は約19%でした。湿地の割合は昼の約26%から夜の約76%へ増えています。一方、アナディリ地方から中国へ渡る集団は、昼も湿地の割合が約62%と高く、夜は約92%になりました。冬に同じ中国へ渡っても、農地をよく使う集団と、湿地をより多く使う集団が暮らしています。
絶滅のおそれの評価は、まだ掲載していません。
宮城県大崎市の化女沼は、日本で冬を過ごす亜種ヒシクイの重要なねぐらです。真冬でも完全には凍らない湖で、周囲には水田が広がります。国の鳥獣保護区の中でも、特に保護される地区に指定され、2008年10月にはラムサール条約の湿地に登録されました。市や民間団体は、住民とともに湿地や周囲の里山を再生・管理し、外来生物を減らす取り組みを進めています。