南米南部の水辺にすむハクチョウです。成鳥は白い体に黒い頭と首を持ちます。
成鳥では、灰色がかったくちばしの付け根に赤いこぶが目立ちます。幼鳥は淡い灰褐色で、まだ黒い首を持ちません。
クロエリハクチョウは、海辺で貝殻も使って巣を作ります。チリ南部のカウリン湾では、小枝、低木の葉、草、石に交じり、二枚貝や巻き貝の殻が巣に入っていました。地面の上に作られた巣は、丸いケーキのような形をしています。抱卵中のつがいは、白い綿羽を抜いて巣の上部を覆っていました。
2021年の論文では、チロエ島のカウリン湾で、2011年と2014年の8月から11月に、巣の卵やひなを調べた記録を報告しています。潮の満ち引きや風に合わせて歩く道を選び、静かに家族群を追いました。調査の中心となったラカオス島では、海岸近くの草地や低木のそばに巣がありました。別の時期にも双眼鏡などで観察を続け、巣作りが7月ごろに始まり、ひなが9月半ばから12月半ばにかえる様子を記録しています。子育て中の親子は、湾へ注ぐ小川やウエンケ川の河口にも集まり、真水を飲んでいました。海の湿地にいるハクチョウの家族は、陸上の巣と、真水が流れ込む水辺を行き来していたのです。
絶滅のおそれの評価は、まだ掲載していません。
カウリン湾の繁殖調査は、海の湿地で育つクロエリハクチョウのひなについて、生き残りに関わる要因をさらに調べる必要を挙げています。研究者は、島の巣と真水のある河口を行き来する際の強い潮流や、海水の塩分がひなに与える影響を、今後の検証課題としています。また、巣作りや周りの生き物との関係を調べ続け、地元の人たちが進める湿地の管理と保全に役立つ問いを選ぶことを提案しています。海辺の繁殖場所と、子育て中に利用する水辺を合わせて理解するための研究です。