タスマニアクチバシクジラは、オスとメスとも上あごと下あごの両方に機能する歯を持つアカボウクジラです。深く冷たい南半球の沖合にすみますが、海上での観察例は少なく、生態には分からないことが多く残っています。
背側は暗い茶黒色で、脇と腹側は淡い色です。オスとメスとも上あごと下あごに機能する歯がそろう、アカボウクジラ科では特異な特徴があります。
二〇一七年一月、トリスタン・ダ・クーニャ諸島のイナクセシブル島近くで、海中カメラが二頭のタスマニアクチバシクジラを記録しました。カメラ付きの装置は水面下約十メートルに設置され、二頭が画面を横切る姿を捉えました。この映像は島々の二十六地点を調べる調査の一部です。各地点では三台の装置を二百メートル間隔で設置しました。
この映像は、同諸島で初めての水中記録となりました。生きた個体を見た報告も、二〇〇二年以来でした。
映像から体の見える特徴が記録され、船上からは観察しにくいクジラの情報が加わりました。目の周囲の暗い模様、白い喉、胸びれ上の白い模様なども確認されました。海面から見えにくい体側の特徴も撮影できました。
絶滅のおそれの評価は、まだ掲載していません。
海中カメラ調査の報告は、同諸島での初の水中記録で、二〇〇二年以来の生きた個体の目撃記録でもありました。